設計者について

※ 本ページは工事中です。

  現在は骨子のみですが,今後,設計者に関する一般的な法律上の論点を概説する予定

  です。



1 設計に関する法的仕組み


(1)定義

 「設計」 :「その者の責任において設計図書を作成すること」(建築士法2条5項)

 「設計者」:「その者の責任において、設計図書を作成したもの」(建築基準法2条17号)

 「設計図書」:「建築物の建築工事の実施のために必要な図面

       (原寸図その他、これに類するものを除く。)及び仕様書」

       (建築士法2条5項、建築基準法2条12号)


(2)設計の構造

    建築主の要求 → 設計条件の設定  →  設計解  →  図面(作図)

   

(3)設計契約の法的性質

  →基本的には契約自由の原則による。請負契約、準委任契約、混合契約・・・

  →単に設計を依頼しただけの場合にはどうなるか。

   ・請負契約説

   ・準委任契約説(東京地裁民事22部)

   ・混合契約説


(4)設計業務の内容

  ア 国土交通省告示第15号

   ・「基本設計に関する標準業務」

    「建築主から提示された要求その他の諸条件を設計条件として整理した上で、建築物

     の配置計画、平面と空間の構成、各部の寸法や面積、建築物として備えるべき機能、

     性能、主な使用材料や設備機器の種別と品質、建築物の内外の意匠等を検討し、それ

     らを総合して、設計図書を作成するために必要な業務」

   ・「実施設計に関する標準業務」

    「工事施工者が設計図書の内容を正確に読み取り、設計意図に合致した建築物の工事を

     的確に行うことができるように、また、工事費の適正な見積りができるように、基本

     設計に基づいて、設計意図をより詳細に具体化し、その結果として、設計図書を作成

     するために必要な業務」


  イ 善管注意義務(民法644条)

   ① 予算に関する注意義務

      a) 「実際の工事費」が予算内に収まるよう注意する義務 → なし

      b) 「概算工事費」が予算内に収まるよう注意する義務  → あり

   ② 構造上の安全性に関する注意義務

     a) 法令上の基準への適合性  → あり (建築士法18条1項)

     b) 法令上必ずしも明らかでない事項に関する安全性の基準

      (日本建築学会の構造計算基準など)

       善管注意義務の基準になるとは限らない。

       これらの基準は法律上要求されるよりも高いレベルの目標基準の場合もある

        (※はしがきを読むとその位置づけがわかることが多い。)

     c) 地質調査に関する注意義務

      ・地質調査は設計業務に含まれるか → 含まれない。

      ・地質に関する資料収集努力義務は有り。地耐力不明のまま設計するのは不可能

     d) 建築主の内心に関する注意義務 (東京地判昭和50年4月24日など)

     e) 材料選択に関する注意義務(東京地判平成16年9月14日など)

     f) 敷地境界に関する注意義務 → なし。


  ウ 設計報酬額が決まっていない場合の基準

   ・時価相当額

   ・国土交通省告示第15号(平均の値段)



2 不法行為問題について(姉歯事件)


(1)最判平成19年7月6日

   「建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者(以下,併せて「設計・施工者等」

   という。)は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建

   物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと

   解するのが相当である。。そして,設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された

   建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身

   体又は財産が侵害された場合には,設計・施工者等は,不法行為の成立を主張する者が上

   記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情が

   ない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきで

   ある。」


(2)基本的な安全性についての具体例(最判平成23年7月21日)

   「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危

   険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現

   実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するとい

   ずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当

   該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当であ

   る。

 

    以上の観点からすると,当該瑕疵を放置した場合に,鉄筋の腐食,劣化,コンクリート

   の耐力低下等を引き起こし,ひいては建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力

   に関わる瑕疵はもとより,建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても,これを放置した

   場合に,例えば,外壁が剥落して通行人の上に落下したり,開口部,ベランダ,階段等の

   瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるとき

   や,漏水,有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があると

   きには,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するが,建物の美観や居住者の

   居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は,これに該当しない」